他人のさい帯血を国に無届けで投与したとして、再生医療安全性確保法違反の疑いで使用したクリニックの医師や販売業者ら6人が逮捕されました。
そこで本日は、臍帯血とは何か、今回の問題での争点、これからの課題についていろいろ見ていきたいと思います。
さい帯血とは
さい帯血とは、胎児と母体を繋ぐ胎児側の組織であるへその緒の中に含まれる胎児血のことを指します。
ちなみにさい帯とはへその緒のことです。
このさい帯血には造血幹細胞(血球系細胞に分化できる幹細胞のこと)が含まれているため、白血病など血液疾患の患者に移植が行われるようになりました。
同様の供給源としては、骨髄や幹細胞動員末梢血などが挙げられます。
その中でもさい帯血はドナーの負担がないため、造血幹細胞の有力な供給源として考えられています。
ちなみにさい帯血はiPS細胞の作製にも使われており、再生医療研究にも欠かせません。
さい帯血バンク
さい帯血バンクとは、さい帯血を治療に使える状態として保管している機関のことです。
①公的機関
公的なバンクとしては日本赤十字社が運営しているさい帯血バンクなどがあります。
公的バンクに依頼した場合は、「寄付」に値するので自分の子どもや家族に使用することができません。
無償で寄付して世界中の白血病患者に対する治療や先進医療の研究に役立てられます。
②民間機関
民間のバンクに依頼した場合、自分の保存したさい帯血の利用法を自らが自分の都合で選ぶことが可能です。
子どもや家族のために保管することも少なくありません。
こちらさい帯血を保管するために10年間の契約で20万円ほど費用がかかります。
今回の事件から見えた課題
①使用目的
さい帯血はこれまで白血病などの血液疾患に対する治療において大いに活躍してきました。
しかし、がん治療や美容への効果は医学的に証明されていません。
今回逮捕された医師はこれらの治療にさい帯血を使用して大きな売上を上げていました。
②保存状況
さい帯血の使用において、最も重要なのが徹底した管理下での保存だといえるでしょう。
今回の事件における販売者は2009年に破綻した民間バンクから流出したさい帯血を販売していました。
この受け渡しの際に届け出を行っていないと考えると恐ろしいです。
さい帯血治療のこれから
今回は野放し状態になっていた民間バンクにようやくメスが入ったという状況になります。
実際にさい帯血投与後に死亡した例も明るみになってきました。
このような悪徳業者によって医療の進歩が妨げられることはあってはならないですが、被害をなくすために慎重になることは仕方ないことかもしれません。
ヘルスケアの領域において、多くの場合で法整備と新事業の両面が二人三脚で同時に進んでいきます。
現代の技術革新のスピードに負けない法整備の体制がこれからますます求められていくでしょう。
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