ウエスタンデジタル(以下WD)に落ち着きかけていた東芝メモリの売却先、ここに来て再び迷走しているようです。
どうしてあの大企業がこのような事態に陥ってしまったのか、東芝の歴史とともに見ていきたいと思います。
東芝の主要事業
東芝を家電事業がメインの会社だと思っている人もおられるんじゃないでしょうか?
実は全体の売上の10分の1にも満たないのです。
主要事業は主に以下の4つです。
①エネルギー事業
②社会インフラ
③電子デバイス
④デジタルソリューション
これらが売上の8割以上を占めています。
ウエスチングハウス買収
2005年、イギリスの核燃料会社がウエスチングハウス(以下WH)の売却計画を発表しました。
ここへ東芝、GE、三菱重工など錚々たる企業が関心を示しましたが、2006年に東芝が50億ドルで競売に勝ちました。
2000億円の会社に6000億円もの金額を出すことには賛否両論がありました。
原子力事業において「沸騰水型原子炉(BWR)」を手がけていた東芝は、世界で主流の「加圧水型原子炉(PWR)」の開発製造で世界的な地位を持っていたWHの買収をチャンスと捉えていました。
東芝を待ち受けていた落とし穴
実はWHのエンジニアリング、調達、建設においてショー・グループが独占的に行う権利を有していました。
このショー・グループがその後のトラブルの種となりました。
2008年4月に米国ジョージア電力、5月にSCE&Gと新規原子力プラント建設の契約を締結しました。
しかし東日本大震災の影響で着工が遅れ、その費用の負担を巡ってショー・グループ傘下のS&Wと訴訟騒ぎとなりました。
そうした中、ショー・グループはWH株を東芝に売却、S&WもWHに売却して原発事業から撤退しました。
このS&Wが粉飾決算にまみれた爆弾でした。
原発事業の納期の遅れ、S&Wの粉飾などによって東芝の損失は莫大なものとなってしまいました。
東芝は負債を押し付けられた形になります。
東芝による不正会計
やはり上記のWHでの各種トラブルは大きな要因だったように思います。
これらトラブルによってWHの「のれん」減算処理は大きな打撃だったでしょう。
これとは全く異なる角度の面白い見解がここに書いてあります。
ここには繰延税金資産の取り崩しを避けたかったのではないかという意見があります。
繰延税金資産とは将来の会計期間に帰属すべき税金費用を前払いしたときに生じる資産のことです。
ソニーや日立も当期純損失によって繰延税金資産を取り崩し、3000億円相当の当期純損失を計上した過去もあります。
これは各種グローバル企業が国内事業の採算性に苦労していることを示しています。
これが東芝の不正会計処理の背景になっているとも考えられるようです。
不正会計その後
東芝傘下に入ったWHはその後、破綻申請を行いました。
その損失の影響が各事業に及ばないようにするため、東芝は分社化に踏み切ります。
社会インフラ事業の「東芝インフラシステムズ」、メモリー以外の半導体と記憶装置事業の「東芝デバイス&ストレージ」、ICT事業の「東芝デジタルソリューションズ」、そして新たに争点となっているメモリ事業の「東芝メモリ」です。
東芝メモリの売却
東芝は上場取消を避けるためにキャッシュを手に入れるために主力事業の1つ、東芝メモリの売却を決めました。
現在はその売却先について、紆余曲折しています。
SKハイニックスとベインなどを中心とした日米韓連合などが有力かと言われていましたが、いまはWDが独占交渉権を得る方向となりました。
しかし出資比率をめぐり今後もどたばた劇は続いていきそうです。
海外企業のM&A
東芝のみならず日立、三菱地所、日本郵政など日本企業の海外の大型M&Aで失敗のニュースが続いています。
これらはのれん代が想定以上に高く付いてきている例が多いように感じます。
そういった意味でも確実にキャッシュが得られることがM&Aにおいて重要なのかもしれません。
しかしそんな中、JTやソフトバンクは海外M&Aによって粛々と事業拡大しています。
今後、世界の中で日本企業が輝きを取り戻すためには海外M&Aのノウハウを学んでいくことが鍵になるかもしれませんね。
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